職場は11階
毎日行くのが大変だ。
セキュリティや衛生のため、毎朝全身を分子レベルまで分解して組み立て直して出社する。
その日はどうにもついてなく、エレベーターが全然こない。
仕方なく階段で向かおうとすると、どこにあるのか分からない。
途中カフェの客席に迷い込んだり、ジャングルのような部屋に迷い込んだり、巨大な宇宙服を腰まで脱いだ状態で歩く赤毛でチリチリ頭の女性パイロットが通路狭しと何人もスタスタ歩いてくる。
全員同じ顔。同じひと。同じボンキュッボン。なにかのキャンペーンらしい…と思ったらNASAだって。
ようやくオフィスにたどり着いたら、ほとんど全員出払っていて最後に残っていたのは先輩と今まさに出掛けんとする営業さんだけだった。
デスクにたどり着いて一息するとランチの時間。
どこか食べに出ようとすると出入口付近の床から緑ががった黒いオイルが染み出していて、それを報告すると先輩が電話で点検の人を呼んでくれ、「先に食いに行きな」と、送り出してくれた。
そしてまた小旅行になってしまう。
中世の貴婦人が集うカフェテリアや、明らかにサイズのおかしい赤ちゃん用品店
謎のラーメン屋美味しくないけど、流行ってる。
どこも満席で入れず、ふと見つけたポップコーン製造の自販機。
立ち止まってどんなもんか見てみると、チキンとポテトがドバドバ出てくる。が、受けるカップがない!
右横に据え付けてあるカップホルダーから客が自らカップを供給口に置いて受け止めなければならなかったのだ!
やっべーと思って、カップを無理やり滑り込ませると、バンバン溢れるように供給される。
よく自販機を観察すると、天板に、コーヒーのフィルターを分厚くして、底面をカットしたような、ようは漏斗のような紙が積み重ねてある。が、オレンジ色ががった透明のプラスチックで覆われている。本来は自動でカップの上に置かれるはずなのが、壊れていて手動になってるようだ。
貼り紙でもしておいてくれればいいものを…
後の祭りだが、プラスチックカバーを開けて、カップの上に漏斗をねじ込む。なんとか工夫してチキンとポテトを受け止めるのだ。
数分後、ボタボタと大量のチキンとポテトを供給し続けた機械が止まったので、さっそく食べてみる。
飴色を通り越して、赤に近い茶色の焼き色がついた柔らかい北京ダックを切り落とした感じのやつと、やたらホクホクのフライドポテト。
これが異常に美味い。
うひょーと思って食べながら1階ロビーを
歩いて行くと、壁際に網がいくつもぶら下がっており、チキンの丸焼きがむき出しで大量に置かれている。
今まさに食べているこのチキンの切れっ端の元が、これか。
なんつー適当な商品管理なのか。
そういえば自販機にお金を投入した記憶もないし、ボタンすら押した記憶が無い。
だいたい、ポップコーンの自販機と思って近づいたのに、なんでチキンなんだ。まぁ美味いからいいか。
と思いながら通りすがったオープンカフェとフードコートの間みたいな雰囲気の席に知り合いの女性ふたりがいままさに腰掛けようとする場面に遭遇した。
あら偶然!と思って話しかけた瞬間、ふたりの顔が微妙にモーフィングして良く見るとちがう他人に変わってしまう。
その、ひっ!と思う0.5秒前に「あ、こんちわ」と声をかけちゃってたので、軽く会話をするとこちらを知っているふうでやはり知り合いなのかもしれない。
しかし気味が悪いので早々に立ち去ることにした。
後ろで聞こえる会話を聞くでもなく聞くとふたりは共通の出身校である早稲田大学のはなしをしている…が、ふたり日大のはずだ。やはりおかしい。
映画館に通りすがると、飲み物とポップコーンを買おうとカウンターに並ぶ人々が道を塞ぐ。
上映中の映画は「エイリアンVS植木等」と「木根尚登ニューヨークへ行く」、「前略傷だらけのショーケン取引所の天使にラブソングを」
1作品目はプレデター役が植木等。
2作品目は星の王子が木根尚登。
3作品目はもうなんだかわからない。
オフィスへ戻ると目が覚めた。
イカれた夢だよおっかさん

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